アニメニクス

さくら、もゆ。コラボ〈邂逅 メアとクロ〉

第一話 しろいくろねこ

カンカンカン。


踏切の音がする。


ポーッ。


これは……汽笛?
どれもこれも、馴染みがない。


雲雀ヶ崎の展望台で、今夜もまた星空を見上げていたメアは、この場所では聞こえるはずのない音色を耳にしていた。

メア「汽車が……走ってるの?」

いったい、どこで?


メアはそのとき、見上げていた星空に流れ星を見つけた。

その流れ星は途中で途切れず、それどころか徐々にこちらに近づいてきて、あたかも隕石の飛来のようにしてこの展望台に着陸した。


いや。着陸というより、激突した。


ドゴーンって、爆発みたいな轟音も鳴っていた。


メア「な、なに……? なにが降ってきたの?」


メアはおっかなびっくりに、地面に落下して煙を上げているところに近寄った。
そこでは、黒猫が目を回して倒れていた。

いや、猫じゃない。頭にネコミミを生やし、お尻にしっぽも生やした、人型のなにか。

よく見れば黒くもない――全体的に白いのに、なぜ最初は黒猫だなんて思ったのだろう?

第二話 人見知りのねこ

その白い人型のなにかは、リュックサックを背負っていて、手にはなぜか虫取り網がある。

メア「これ……なんなの?」

ぴくりとも動かない。まさか、死んでる?
猫の死体? ううん……化け猫の死体?

メアは怖がりながらも、カマの柄で突っついた。ちょんちょんと。
すると、相手は気絶していただけらしく、ううーんとうなりながら、まぶたを開けた。


緩慢に上体を持ち上げ、首をきょろきょろさせたたあと、目を見開く。
その視線は、目の前のメアに注がれている。

顔が、沸騰したように真っ赤になった。

??「っ!」

その謎の化け猫は、一目散に逃げていき、近くの草むらに隠れてしまった。
どうやら、化け猫は人見知りらしい。メアは人じゃないから、ちょっと語弊はあるけれど。

ともあれ、メアもまた人見知りの気があるし、なんだか親近感が湧いた。
あの化け猫のことが放っておけなくなってしまった。

化け猫は隠れているが、しっぽが丸見えだったので、メアは苦もなく見つけることができた。

メア「ねえ」

??「っ!」

草むらが震え、見えていたしっぽがぴんと逆立った。

メア「えっと……あなた、なんなの。普通の人間と違うみたいだし……星神?」

??「……ほしがみ?」

草むらの中から、声が返ってきた。

メア「星神というのは、わたしみたいな存在のことよ」

??「……えっと?」

メア「悪夢を刈る死神ってこと」

??「悪夢……」

興味を引かれたのか、化け猫はひょこっと顔を出した。

第三話 邂逅 クロというしろいねこ

それから、目を泳がせながら、もにょもにょと唇を動かした。

??「わ、わたしは……悪夢を回収するために、ここに来たんだよ」

今度は、メアが困惑する番だった。

メア「……回収って? 悪夢は、刈るためのものよ」

??「きみが、なにをもって刈ると言うのか知らないけど……だけど今のわたしは、回収を役目としてる。正確には違うけど、不正確に言うことがここでは最も正確な言葉になる、と思う」

メアはちょっと呆れた。
この子は、アレだ。考えすぎて回りくどい、あの人と同じタイプだ。
ただ、あの人と違うのは、恥ずかしがり屋で口下手なところ。
だからメアは、話を円滑に進めるには、自分が主導になるべきだと考えた。

人見知りなんて、言ってられない。だって自分は、お姉さんだ。
あの人が恋い焦がれる彼女に負けないくらいのお姉さんに、自分はなりたいのだ。

メア「わたしはメア。あなたの名前も教えてくれる?」

??「……クロ」

メア「ねえ、クロ。あなたは悪夢を回収するって言ったけど、そのためにこの雲雀ヶ崎を訪れたってこと?」

クロ「あ……わたし、ちゃんと雲雀ヶ崎に下車できたんだね」

下車っていうか、空から地面に墜落してたけど。

クロ「途中に、駅がいくつかあったから、どの駅に降りればいいのか迷ったんだけど……」

クロが、口下手ながらも話した駅とは、なにを指しているのか。

メアは、博識で頭でっかちのあの人から聞いていたおかげで理解できた。

第四話 線路と駅と思い出の声

雲雀ヶ崎駅までの道中には、駅が三つある。

ひとつは、南雲雀ヶ崎駅。
駅のホームに降り立った瞬間に桜が出迎えてくれるという、春の名所となっている。
それだけではなく、あの双子巫女がいる星天宮もまた、この駅が最寄りとなっている。

もうひとつは、色内駅。
現在は廃駅となっている、旧手宮線の駅のひとつ。
だけどそこは、今も観光用として残っている。
休憩所に紹介パネルが並び、北のウォール街と呼ばれて賑わっていた当時の様子を垣間見ることができる。

そして最後のひとつは、手宮駅。
こちらもすでに廃駅となっていて、かつては手宮線の終点だった。
旧手宮線は、この地域の開拓や発展に大きく寄与したため、今でもイベントに活用され、市民や観光客に親しまれている。

廃線跡のほとんどは、文化財として大切に保存されている。
線路の踏切だって、当時のまま残っているのだ。

だから、メアは思った。
自分が聞いたあの踏切の音は、この線路の想い出の声だったのだろうと。
あの汽笛の音は、歓喜の声だったのだろうと。

そう。クロが乗ってきた、銀河鉄道の。

第五話 悪夢

クロ「死神さん。わたしが知らないイキモノさん。悪夢を刈るという、わたしとは世界の解釈を異にする死神という名の神さまさん」

クロと名乗った人見知りの化け猫が、回りくどくも自分から声をかけた。
まだ草むらに隠れてはいたけれど。


というか、神さまさんとか、初めて言われたけれど。


クロ「わたしは悪夢を回収するために汽車に乗って、その発生源の町に下車した。だからこの雲雀ヶ崎には、強くて大きくて、一刻も早い対処が必要な悪夢が生まれてる」

メアもまた、思い当たるフシがあったので、クロのその言葉にうなずくことができた。
最近になって、原因不明の流行病が猛威を振るうようになったのだ。
自治体から緊急事態宣言が発令され、不要不急の外出は禁止されるようになり。
人と接触すると飛沫感染が起こり、最悪の場合は命を落とすことになると喧伝された。
だから、誰も彼もが交流を絶ち、家でおとなしくするしかなくなった。

その影響で、特に飲食店は打撃を受けた。
あの人が懇意にしている喫茶店も、売上が激減した。
このままでは店を閉めるしかなくなると、マスターや、その娘の赤髪の子も困っていた。


メア「今、この雲雀ヶ崎では、人と人のつながりが途絶えようとしてる」

クロが神妙に口を開く。

クロ「その原因が、ここにある。悪夢が、ここにいる。だからわたしは、ここに来た。この展望台に、激突してまで足を運んだんだよ」


というか、なんで激突しないとここに来られなかったのかメアにはよくわからないのだが、とりあえず隕石みたいなものなんだろうと強引に納得した。
隕石とは、命の源。
もっと言えば、魂の源。神も人も含めた、存在の源。

クロと名乗った化け猫からも、それと同じ匂いを感じ取れる。
クロは草むらから出ると、ある方向に歩いていった。
そこは、この展望台の唯一の建物である、展望室。

見ると、メアがよく座っているその部屋の縁に、今はほかの誰かが座っていた。

いや。

座っているんじゃない、載っていた。




ぬいぐるみが。

第六話 太陽コロナ

そのぬいぐるみはまん丸の形をしていて、頭のてっぺんに王冠をかぶっていた。

なにかを誇示するように。

なにかを訴えるように。

悲痛な叫びのようにして。



それは、太陽コロナを模したぬいぐるみ。
太陽コロナとは、この星を恵む光の源とも呼ばれている……。

クロ「迷子……。夜にさまよう、心の源」

クロは、このぬいぐるみをそう称した。

クロ「あれ……? これ以上、近づけない?」

ぬいぐるみに向かっていたクロの足が、止まった。いくら前に出ようとしても、これ以上は一歩も踏み出せずにいた。
メアも試しに近づいてみるが、ある一定の距離まで来ると、同じように足が動かなくなる。
まるで、見えないガラス板に阻まれたようにして。

きっと、このガラス板は。


この悪夢――トラウマに囚われてしまったこの子の、心の壁。


クロ「大丈夫だよ」

クロが、幼子をあやすように声をかける。

クロ「わたしたちは、決して、きみを傷つけたりしないよ」

――――ウソ。
――――わたしの周りの誰もが、そんな言葉を口にした。
――――そして、そんな誰もが、わたしを裏切って傷つけた。

どこからともなく響く、心の声。

メアは悟った。

目の前にたたずむ太陽コロナのぬいぐるみは、とても人見知りな、幼子の悪夢なのだと。
悪夢に長け、共感力にも秀でたメアは、言葉を交わすまでもなくその子の心情を感じ取る。
そして、きっとクロも、同じような力を抱いている。


目の前のこの子は、学校に馴染めなくて、引きこもっていた。
すると、いつの間にか、家でも居場所がなくなっていた。
親に邪険にされ、その他の親族にも邪険にされ。
友だちだってひとりも作れずに。
自分はもう、生きていい場所がない。
息をしていい、場所がない。


あたかも、マスクを強制させられている息苦しさ。


その子はいつしか、誰かとお話しするどころか、誰かと目を合わせることもできなくなった。


息苦しい。
重苦しい。
助けて。
誰か、助けて。

これじゃあ、眠れない。

安心して眠れないよ……。

第七話 ありがとう星の神さま

メア「……そう。それが、あなたの悪夢なのね」

メアはうなずき、カマを掲げた。
それはルーン文字が刻まれた、人知を超えた星の神さまの御業。

メア「わたしが……ううん。わたしたちが、あなたを安らかに眠らせてあげるわ」


メアの視界の端には、虫取り網を構えたクロの姿が映っている。

メア「おやすみ。その悪夢が、幸福な夢へと、生まれ変わりますように」

メアはカマを振るった。
その軌跡は、メアとクロの侵入を拒んでいた心の壁をいとも簡単に突破した。


砕け散るその様は、まるで星が降るようだった。
光が散る最中、もう一度振ったメアのカマが、太陽コロナのぬいぐるみの胸を刈った。
刹那、超新星爆発のごとき閃光が生まれた。
ぬいぐるみの王冠が、儚い美しさを象徴する、桜吹雪のように舞い散った。


クロ「っ……! 今だ!」

そしてクロが、その瞬間を狙い澄まし、虫取り網を振り下ろした。
桜を模して砕け散った王冠は、あたりに飛散する前に、その網にからみ取られた。

クロ「やった……うまくいったよ!」

捕獲したそれを、クロは網越しに優しく撫でた。

クロ「あったかい……ううん、熱い。隠れていた太陽が、雲から出てきたみたいに」


これで、雲雀ヶ崎を覆っていた雲――流行病も、霧散する。
呪いのようだったこの子の悩み、恨み辛みは、この瞬間に晴れたのだから。

昼には、青空の下。
夜には、星空の下。
雲雀ヶ崎の住民は徐々にその足を外に向けるだろう。

引きこもりの悪夢に囚われず、天の光を求めるようになるだろう。

クロ「きみの未来に、たくさん、たくさん、キラキラの光が降ることを……祈るよ」

クロは、捉えた悪夢にそう語りかける。
それから、メアに瞳を移し、改まって礼を言った。

クロ「ありがとう……死神と名乗る、星の神さま」

クロは担いでいたバッグに、捕まえた悪夢をよいしょと押し込んだ。

クロ「これでわたしは、目的を果たせた。わたしの大切な人……あの人の力になることができた」

クロのしっぽが、うれしそうに左右に揺れていた。

クロ「わたしは自分の町に帰る。自分の世界に帰る。死神さん、きみが住むこの町……この雲雀ヶ崎のことは、とても大きなお土産話になりそうだよ」


メアにとっても、この不思議な化け猫との邂逅は、あの人への土産話になりそうだ。

第八話 ミルキーウェイ

クロ「あ……汽車のお迎えが来るのは、もうちょっと先になりそう。それまでどうしよう……」

クロは誰かと電話のやり取りをしたあと、ネコミミとネコしっぽをヘナヘナとしおれさせた。


どうも彼女は、帰宅時間までに余裕ができてしまったらしい。

だったらと、メアはお姉さんぶって提案することにした。

メア「やることは決まってる。悪夢は、まだ残ってるんだから」

クロ「え……?」

クロは驚き、ネコミミとネコしっぽをピンと立てた。

メア「流行病がなくなっても、すぐに町は潤わない。お店はなかなか繁盛しない。そう簡単にお客を取り戻すことはできない」

経済にも詳しい頭でっかちのあの人が、そう言っていたはずだ。

メア「だから、クロ。帰る時間になるまで、手伝って」

クロ「て、手伝うって……?」

メア「ウェイトレスって、やったことある?」

クロ「ええ……? な、ないけど……?」


メアはこのときも、お姉さん風を吹かせて言うのだった。

メア「お店が繁盛するように、わたしと一緒にウェイトレスをしましょう」

クロ「えええ……? な、なんで……?」

メア「あなたのためにもなるから」

クロ「そ、そうなの……?」

メア「うん。わたしはやったことがあるから、慣れてるわ。あなたに教えてあげる」

たしかにメアは、過去に喫茶店のウェイトレスに扮したことがあるが、仕事と呼べることはほとんどできていなかった。
だが、メアの中では完璧にこなしたことになっていた。


本当はウェイトレスの仕事なんてなにもわからないため、そのせいでメアが困ったことになるのは、またちょっと先の未来の話になるのだけれど。

メア「いい? お姉さんのわたしが、あなたにウェイトレスのなんたるかを教えてあげるわ」


ウェイトレスのなんたるかはさておき、これは人見知りを解消するために役立つだろう。
特に、クロはメア以上に人見知りだ。
だからメアは、お姉さんとして彼女の力になりたいとマジメに思っていた。

この経験は、絶対にクロのためになる。
たとえ、短い付き合いだとしても。それがすでに確定しているのだとしても。

クロ「眠れない夜は一緒に星を数えよう……。わたしの大切な人が、言った言葉」

クロは不意に、そう言った。

クロ「今日という日は、忘れられない日になった。そんなキラキラに輝いていた時間の中に、わたしもまだ、身を置いていたいと思う」

だから、とクロは言葉を継いだ。

クロ「ウェイトレス……恥ずかしいけど、やってみるっ」

かわいらしいガッツポーズを取ったクロに対して、メアは当然とばかりに胸を張った。


それから、クロは続けてこう言った。

クロ「喫茶店なら、苦くないチョコレート、あるんだよね?」

クロの瞳に、甘いチョコをたくさん食べたいと書いてあった。
店の手伝いをしていれば、まかない料理を食べられる機会はある。
とはいえ、なにが食べられるかは、あくまで店が仕入れている食材次第。

さて、その喫茶店にはどんなメニューが並んでいるのか?
なんちゃってウェイトレスでしかないメアは、あまり覚えていなかった。

メア「……え、えっと。たしかケーキがあったような」

クロ「ケーキ……!」

メア「パフェもあったような」

クロ「パフェ……!」

メア「プリンもあったような」

クロ「プリン……! やったー!」

クロはご満悦だった。
すでにヨダレが垂れるくらいに。


メアは、適当に言ってしまったことを誤魔化しつつ、雲雀ヶ崎の星空を見上げた。
今夜もまた変わらずに、天から地上に光を分け与えている。
この星に生きる者たち、すべてに。

【 ありがとう。】

この先だって、どんな悪夢にも負けはしないよ。

そうしてメアは、クロを連れて。
クロと手をつないで、大切な人たちのところに向かうのだった。

第九話 エピローグ

後日談がある――――


洋「今夜も、星が綺麗だな」

メア「うん」


メアは今、大切な人と一緒に、展望台で星見をしている。

人々を苦しませた流行病はいなくなり。
雲雀ヶ崎の住民は、人と人のつながりを取り戻した。

代わりに、クロと名乗った不思議な化け猫は、もういない。

だけど、昨夜のことだった。
あの汽車が再び、想い出の汽笛を鳴らしながら、流れ星のように夜空を走った。
メアが驚いていると、ひらひらとなにかが舞い降りてきた。

それは手紙だった。

封筒の中に、お礼が書かれた便せんと、そして。

クロが、お土産として持ち帰った喫茶店のチョコレートケーキを、仲間たちと一緒に食べている写真が入っていた。

だから、もしかしたら。
また出会えるのかもしれない。

たとえば、来年の同じ日に。

その日は、織姫と彦星が再会する、七夕だ。

洋「また来年も、甘いお菓子を用意しなくちゃいけないな」

メア「うん!」


どこかで、あの汽笛が、返事をしたように鳴った気がした。



ミルキーウェイで給仕してくれたメアちゃん&クロちゃん

星空のメモリア
~メアとおたんじょうび会~
メアたん2021

喫茶ミルキーウェイで給仕してくれたメアちゃんとクロちゃん!

こちらのページではイベント時に実際に給仕してくれたコスプレイヤーさんをご紹介しております。

☆ryoさんのご紹介☆
毎年メアちゃんのコスプレをしてくれています。
昨年は初のメアたん生配信でも活躍してくれました。
他、北海道内のイベントでは色々なコスプレで皆さんを楽しませてくれています。
昨年の生配信はYouTubeにて←タップ
ryoさんのTwitterはコチラをタップして下さい。

☆蜜苺さんのご紹介☆
北海道で活躍している現役の大人気コスプレイヤーさんです。
道内のイベントで色んなところから呼ばれる人気はまさに北海道内TOPレベルです。
蜜苺さんのTwitterはコチラをタップして下さい。

☆shihoさんのご紹介☆
北海道で活躍している現役の大人気コスプレイヤーさんです。
ハイクオリティなコスプレも目を引きますが最近はイベントMCも道内各所でこなすマルチな活躍!!!
そしてコスサバに参加するほどのサバイバルゲーム好き!?も有名ですね。
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